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〇下肢・足趾〇
膝窩動脈損傷(しつかどうみゃくそんしょう)のポイント



鼠蹊部から膝上部まで走行する大腿動脈は、膝窩を通るところで膝窩動脈と名を変えます。


※膝窩とは、膝の後ろのくぼんだ部分。




膝窩動脈損傷は、圧倒的にバイクと自動車の衝突で発生しています。
大腿骨果部骨折、膝関節脱臼、𦙾骨・腓骨開放骨折、これらの傷病名に合併することが多く、血行再建が遅れると、膝上切断となる重症例です。
特に、膝関節脱臼に伴う膝窩動脈損傷の発生率は、20〜40%と報告されています。
 
交通外傷による膝窩動脈損傷では、骨折や関節・筋損傷などの複雑な病態を合併することが多く、血行再建や観血的整復術は、専門医が担当すべき領域と言われています。

 
?20歳、女性
バイク転倒にて左𦙾骨・腓骨開放骨折し観血的整復術が実施される。
2日後に専門医に転院するも、膝窩動脈は完全断裂し閉塞していた。
血行再建後、感染壊死にて膝上切断となる。
 
?18歳、男性
バイク転倒にて右大腿骨骨折、左𦙾骨・腓骨開放骨折し観血的整復術24時間後に専門医に転院、膝窩動脈は完全断裂、閉塞状態であった。
血行再建を実施するも、感染壊死にて膝上切断となる。
 
?68歳、男性
歩行中、車に衝突され左大腿骨骨折、左膝開放性骨折し観血的整復術12時間を経過した時点で専門医に転院、膝窩動脈は伸展され完全閉塞していた。
血行再建を実施するも、左足関節拘縮となった。
 
?21歳、女性
乗用車を運転、自損事故により、右膝関節を脱臼、整復術の10日後に専門医に転院、膝窩動脈は伸展され完全閉塞していた。
血行再建を実施するも、左膝関節の拘縮となった。
 
?47歳、女性
乗用車を運転、自損事故により、左𦙾骨・腓骨骨折、左膝開放骨折で観血的整復術を受ける。
術後、4日を経過した時点で専門医に転院、膝窩動脈は伸展され完全閉塞していた。
血行再建を実施するも、感染壊死にて膝上切断となる。
 
?59歳、女性
歩行中車に衝突され、左𦙾骨・腓骨骨折で整形外科搬送後、直ちに専門医に転送、膝窩動脈は不完全断裂、伸展され完全閉塞していた。
血行再建後、虚血症状は改善され、後日、観血的整復術を施行し経過良好だった。
 
上記の6例では、膝窩動脈は完全閉塞しており、自家静脈にて血行再建が行われました。
5例は整復術後に血行再建術が実施されたのですが、内3例が感染、壊死から膝上切断となり、2例が足および膝関節に拘縮の後遺障害を残しています。
そして、血行再建を先行した1例については、膝窩動脈損傷後の経過は良好で、症状固定となっています。
 
交通外傷による膝窩動脈損傷では、虚血症状が遅発性に発症することが多く、まず、可及的速やかに膝窩動脈損傷を診断し、整復術に先行して血行再建術を行うことが重要とされています。




 
膝窩動脈損傷における後遺障害のポイント
 

1)血管損傷の症状は、5つのPに代表されます。
?PUFFINESS=著明な腫れ、
?PAIN=疼痛、
?PULSELESSNESS=動脈拍動の減少ないし消失、
?PALLOR=下腿の蒼白、冷感、
?PARALYSIS=知覚異常、
 
上記の5つ以外にも、斑状出血が認められることがあります。
※斑状出血とは、破れた血管から漏れた血液が、皮膚組織や粘膜に入り込んでできる小さなアザのことで、直径3mm未満を点状出血、直径2cmまでを斑状出血、さらに大きなものは、広汎性皮下出血と呼ばれています。
 
通常の診断では、まず足背部で動脈の拍動を触れることで、確定診断は、血管造影となり、血管損傷があれば、緊急手術で血管再建術が実施されています。
 
ところが、膝窩動脈損傷の見逃される率は、72.7%と報告されており、その原因として、
?典型的な5つのPが認められない動脈損傷が多いこと、
?初診で、足背動脈が僅かながら触知でき、経過観察となったものなど、
臨床症状の不確実さが指摘されています。
つまり、迅速に確定診断をするための手段がない現状であるのです。
さらに、確定診断として血管造影が汎用されていますが、血管造影には、1〜2時間の多大な時間を要するのです。
 
2)一方、筋肉の阻血許容時間は、6時間とされています。
この6時間は、血行再建までのゴールデンタイムと呼ばれているのです。
先の例でも、観血的整復術後に24時間、2日間、4日間を経過したものは、いずれも膝上切断となっています。血行再建術は、経過時間との闘いなのです。
 
3)1下肢を膝関節以上で失ったものは、4級5号が認定されます。
労働能力喪失率は92%、自賠責保険の後遺障害保険金は1889万円です。
赤本基準であれば、後遺障害慰謝料は、1670万円、
被害者が37歳男性で、前年度の所得が580万円であれば、逸失利益は、
580万円×0.92×15.372=8202万円が予想されます。
 
臨床症状の不確実さが指摘されているのですから、軽々に医療過誤を口にしないことです。
 


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