踵骨骨折は、大きく分類すると、以下の2つです。
?捻挫や反復動作の外力と靱帯の張力が作用して発症するもの、
?高所からの転落などで、踵を強く突いたときの外力により発症するもの、
?は踵骨前方突起骨折で説明を終えています。
ここでは、?転落などによる衝突・圧迫型の骨折を解説します。
踵骨(しょうこつ)とは、かかとの骨で、直接、地面に接して体重を支えています。
足根骨の中で最も大きく、不整な四角形であり、かかとの突出は、この骨の隆起によるものです。
踵骨は硬い皮質骨の殻のなかに、スポンジのような軟らかい骨、海綿骨が詰まっています。
例えれば、和菓子のモナカの構造によく似ているのです。
高所からの転落で、モナカを踏み潰したように骨折し、踵骨上面の関節面が落ち込むのです。
結果、踵骨の上に位置する距骨との関節が転位し、踵が幅広く、高さが低く変形するのです。
骨折は、主にかかとの後面からの衝撃で発症する陥没型骨折と、かかとの下面からの衝撃で発症する舌状型骨折があります。距骨の突起部が舌のように見えることから、このように呼ばれています。
関節陥没型
舌状型
骨折線は関節面におよぶことが多く、転位を残したままでは重度の機能障害を生じます。
踵骨全体像もケーキを押しつぶしたようにペシャンコになり、疼痛や扁平足などにより重篤な歩行障害を残すことが多く、治療が長期化し、非常に厄介な骨折です。
下方に向かって骨折するもの、踵骨後方へ向かって水平に骨折するものがあります。
転位のないもの、転位が小さく徒手整復が可能なものは、4〜6週のギプス固定となります。
一方転位があって、徒手整復が困難なときは、オペによる整復と固定が実施されています。
転位とは、距踵関節部でずれることです。
この骨折の形状では、オペによる整復と固定が実施されています。
骨癒合を完了しても、痛みや腫れが改善しないことが多く、骨癒合後のケアに苦労します。
疼痛や腫脹が消失するまで2〜3年を要するケースも非常に多くあります。
また、粉砕骨折や後距踵関節に骨折線がおよんでいる症例では、確実に後遺障害を残します。
外傷後関節症などで変形を生ずると、強い疼痛や歩行障害が残存します。
こんなときは、関節固定術のオペが選択されています。
踵骨骨折における後遺障害のポイント
1)踵骨骨折では、骨折部の疼痛が後遺障害の対象となります。
症状としては、歩行時の痛み、坂道や凸凹道の歩行や長時間の立位が困難なこと、高所での作業が不可能であることが代表的です。
この状態が2年以上続くこともあり、症状固定の時期の決断が難しいものです。
事務職であれば、問題を残しませんが、営業職や現業職では就労復帰が遅れます。
当面の配置転換が可能であれば、この問題はクリアーできますが、全員がそうではありません。
骨癒合が完了した時点が、症状固定の決断をする時期でしょう。
XP、CTで骨折後の骨癒合状況を立証し、なんとか12級13号の獲得を目指します。
?これ以外には、ベーラー角度の減少による外傷性偏平足があるかどうか?
ベーラー角は、20〜40°が正常ですが、健側と比較して問題提起をしています。
これもONISのソフトで計測できます。
?距踵関節面に、僅かでも変形が認められるかどうか?
?MRIで、内外果の周囲の腱や靱帯、軟部組織に瘢痕性癒着が認められるかどうか?
これらのチェックも必要です。
2)もう1つ、踵骨の骨折部にズディック骨萎縮が認められ、灼熱痛を訴え、車椅子状態で、就労復帰の見通しが、どうにも立たないことがあります。
これは単なる疼痛ではなく、複合性局所疼痛症候群、CRPSタイプ?カウザルギーです。
カウザルギーを丹念に立証して、後遺障害等級を獲得しなければなりません。
3)踵骨の粉砕骨折、後距踵関節に骨折線がおよんでいる重症例では、歩行時の疼痛にとどまらず、足関節に大きな可動域制限を残します。
★足関節の背屈と底屈の計測にとどまらず、内返し、外返し、回内、回外まで行うべきです。
さらに、CTの3D撮影で、べーラー角の計測による縦アーチの崩壊、距踵関節面の変形、MRIで、内外果の周囲の腱や靱帯、軟部組織の瘢痕性癒着を緻密に立証し、上位等級を目指します。
歩行時に足底板の装用を必要としているかも、等級獲得ではキーポイントです。