SLAP損傷=上方肩関節唇損傷は、肩関節を構成する肩甲骨に付着する軟骨の関節唇が、交通事故外傷で断裂した状態のことです。
正常な関節唇
断裂した関節唇
〇印の部分が関節唇で、三角形の形をした軟骨が上下に1つずつあります。
肩関節を構成する肩甲骨に付着する軟骨を関節唇と呼んでいます。
上腕骨と肩甲骨の間に存在し、肩関節の安定、関節の可動性、滑り止めの機能を有しています。
相談に来られた被害者32歳男性は、2014年3月、バイクを運転中に自動車と接触、転倒して、左肩を路面に打ちつけました。
傷病名は、左肩腱板損傷、SLAP損傷と記載されています。
6カ月を経過した時点の症状は、左肩痛、左肩関節の可動域制限でした。
持参されたMRIのCDで、左棘上筋の部分断裂と左上方肩関節唇の断裂が確認できました。
肩関節の可動域は、屈曲が150°外転が130°内転0°でした。
左肩の痛みは、一時よりは軽減しているとのことであったので、症状固定、後遺障害診断、被害者請求とすることをアドバイスしました。
その後、12級6号が認定され、その後は訴訟基準での和解が実現したのです。
SLAP損傷における後遺障害のポイント
1)MRIで断裂して剥がれかかっている関節唇=軟骨が、保存療法で治癒することはありません。
時間の経過で、痛みも少なくなり、可動域も一定程度は改善しますが、元通りはありません。
被害者の治療先は、どこにでもある整形外科で、内視鏡下関節唇修復術の技術はありません。
そこで、症状固定を優先、先に等級を確定させてから、治療を検討することになったのです。
2)示談解決後、被害者は、内視鏡下関節唇修復術を受けました。
断裂して剥がれかかった関節唇は、内視鏡下で縫合され、オペに要した時間は2時間未満です。
入院4日で退院、職場に復帰し、リハビリ通院は、20回で完了、元の可動域まで戻りました。
元の治療先が、内視鏡下関節唇修復術の技術を有しているのであれば、もっと早い段階で、このオペが実施されています。そうであれば、後遺障害は棘上筋損傷の痛みで、14級9号にとどまると予想します。
これは、先に後遺障害の確定、損害賠償の実現をしてオペを受ける合理的な選択した1つの例です。
被害者の皆様には、この合理性の理解をお願いしたいところです。