〇下肢・足趾〇
深腓骨(しんひこつ)神経麻痺=前足根管(せんそっこんかん)症候群
<事例>
45歳女性。
対面信号が青となり、横断歩道で歩行をはじめたところ、左折車の衝突を受けた。
傷病名は右腰部、右膝の打撲、左手と左前腕部の擦過傷、右前足根管症候群。
訴える中心的な症状は、右親趾と第2趾基節骨中間部のしびれと痛み。
転倒時に、右足首の捻挫はしていないとのこと。
なお、この被害者はジョギングが趣味で、毎日10kmを走行、事故時もジョギング中だった。
上記のオレンジ色の線が深腓骨神経で、赤色で表示された部分の感覚を支配しています。
青色の部分は、下伸筋支帯と言い、筋膜が変性してできた腱で、ちょうど足首を回り込むようにして存在し、トンネルのような形状で足の背部を通る4つの筋肉を足根骨に押しつける役割を果たしているのですが、深腓骨神経はこの下を通り抜けて出てくるのです。
下伸筋支帯の○部分で圧迫を受けると、深腓骨神経が圧迫され、赤色部が痺れ、感覚異常が出現します。そして、深腓骨神経は、単趾伸筋部でも圧迫を受けることがあります。
深腓骨神経は、単趾伸筋を支配しており、圧迫を受けると、単趾伸筋の筋力が低下します。
しかし、前足根管症候群=深腓骨神経麻痺は、深腓骨神経の単なる絞扼性神経麻痺です。
上記事例の被害者は、履いていたサンダルのストラップ部分で足が圧迫を受けており、毎日10kmのジョギングの際も、靴の紐をきつく締めることにより、その痛みは、年月の経過で発症したものと思われました。
サンダルのストラップ、ジョギングシューズは、靴紐をきつく締めないで様子を見るように指示しました。
ガングリオンなどの腫瘤を原因としたものでは、オペで圧迫因子を開放することになりますが、サンダルや靴が原因であることが大多数です。
当然に、事故によるものではなく、そうであっても、後遺障害の対象にはなり得ません。