〇下肢・足趾〇
<足根骨の骨折>足根管症候群(そっこんかんしょうこうぐん)
上肢の外傷に、よく似た傷病名で、手根管症候群があります。
これは、上肢を走行する正中神経が、手根管のトンネル部で圧迫、締め付けられたことにより、麻痺したもので、交通事故では、橈骨の遠位端骨折や月状骨の脱臼に合併して発症しています。
足根管症候群も、手根管症候群と同じく、絞扼性神経障害で、後𦙾骨神経が麻痺する症状です。
𦙾骨神経は、下腿から足の方へ向って走行、足の内くるぶしの付近で枝分かれをして、足の裏の感覚を支配しています。
内くるぶし付近では、足根管というトンネルが存在して、後𦙾骨神経がその中を通り、交通事故では、𦙾骨内果・距骨・踵骨の骨折、脱臼に合併して発症しています。
症状は、足指や足底部の痺れ感や疼痛を訴えるのですが、痛みの領域が足首以下に限定され、かかとや足関節、足裏に痛みが生じていること、足の親指の底屈不能、痛くて眠れないほど、夜間に痛みが増強するが、足の甲には痛みやしびれが出現しないのが典型的な症状です。
足根管部に圧痛や放散痛が認められ、皮膚の表面から軽く叩いただけで、極めて激しい痛みが放散するチネルサインも陽性となります。
神経の障害ですから、後𦙾骨神経が支配している筋肉の筋電図をとると異常が認められます。
治療としては、保存的に、ステロイド剤の局注、鎮痛消炎剤の内服、足底板の装用、安静で改善を見ることもありますが、効果が得られなければ、屈筋支帯を切離し、神経剥離術を実施しているようです。
オペは、整形外科・スポーツ外来、専門医の領域です。
予後は良好であり、絞扼性神経障害では、後遺障害を残すことはほとんどありません。
足根管症候群における後遺障害のポイント
1)交通事故では、𦙾骨内果・距骨・踵骨の骨折や脱臼に合併して、このトンネルが圧迫を受け、足根管症候群を発症するようです。
したがって、後遺障害の対象は、脛骨、距骨、踵骨の骨折後の変形、疼痛、可動域制限となります。
足根管症候群は、治療で治癒することを目指します。
軽度な足関節捻挫でも、足根管症候群を発症することがあります。
被害者の中には、オペを後回しにして後遺障害を獲得しようと考えますが、それは間違っています。
治癒することが分かっている状態で、調査事務所が後遺障害を認めることはありません。
2) 事例紹介
被害者は40歳男性。
左足関節両果骨折、左足根管症候群の傷病名で、神経剥離術を受けたが、症状改善せず。
症状は、かかとや足関節、足裏の痛みとだるさ感、足の親指の底屈不能。
これらの痛みは、夜間に増強し、痛くて眠れないとの訴え。
→後脛骨神経麻痺は筋電図、骨折後の骨癒合と変形のレベルは3DCTで立証。
結果、左足関節の機能障害で10級11号、左親趾の用廃で12級12号、併合9級が認定。
後遺障害9級が認定されれば、後遺障害慰謝料だけでも、690万円(裁判基準)となり、このほかにも、逸失利益が請求できます。