受付時間 平日9:00〜17:30 TEL:0120-316-752 タップするとお電話がかかります

お問い合せ 債務診断以外の目的には使用いたしません。

〇脊柱・その他の体幹骨〇
脊髄不全損傷=非骨傷性頚髄損傷

事故外傷で、XP、MRIの画像では、明確な骨折・脱臼所見がないのに、脊髄損傷と思われる症状が現れるケースがあります。
不全とは、国語辞典によると、「活動や機能が完全でないこと、不完全」 と解説されています。
脊髄不全損傷の不全とは、原因と損傷部位がハッキリしないことを意味しています。
 
この中には、MRIのT2強調画像で高輝度所見もなく、脊髄損傷の特徴的な神経学的所見、腱反射の亢進、異常反射の出現もなく、筋萎縮も認められない、つまるところ、心因性としか考えられない被害者もいます。この場合、事故との因果関係をクリアすることができません。
 
さて、画像所見は確認できないものの、腱反射の亢進、異常反射が出現しており、著明な筋萎縮、上・下肢に麻痺が認められる被害者がおられます。
麻痺の発現には、脊柱管狭窄が素因となることが多く、頚椎に変性を有している中高年齢の被害者に好発しています。
 
脊柱管狭窄の因子は、遺伝的な狭窄症のケース、骨棘形成、椎間板膨隆や頚椎不安定性等の後天的な頚椎症性変化、後縦靭帯骨化症が考えられます。
多くは、先に説明した中心性頚髄損傷となり、上肢中心の症状となります。
 
しかし、画像所見が得られなければ、非該当もしくは14級9号の選択で、脊髄損傷としての認定はありません。
 
脊髄損傷の高位と程度を診断するには、MRI検査が有用です。
損傷部位は、C3/4が最も多く、急性期であれば、T2強調画像で高輝度が確認することができます。
慢性期では、T1強調画像でスポット状の低信号領域が出現し、その領域が広いほど脊髄損傷の程度は大きいと説明されています。







            T1強調 軟化型                     T2強調 高輝度









本来は、上記の説明の通りですが、固定術等が実施された被害者には、アーチファクトでMRI所見がとれないケースがあることを知っておく必要があります。
 
自賠責調査事務所での認定要件は、MRIのT2強調画像で高輝度が認められることです。
この画像所見が確認できるのは、受傷後の急性期、受傷からほぼ2か月に限定されます。
慢性期にはT1強調画像で軟化型損傷を発見する必要があります。
 
MRI画像の精度ですが、目安としてT=テスラ=解像度が表示されています。
1989年前後にMRIを導入した病院は、0.3〜0.5Tですが、1998年以降は1.5Tが主力で、現在では3Tも登場しています。当然ながら、数字が高いほど鮮明な画像が得られます。
 
MRIの健康保険請求点数は1247点ですから、診療費は1万2470円となります。
どうせ支払いをするのであれば、1.5Tを選択したいものです。
 
しかし、アーチファクトが発生していれば、MRIでの立証は絶望的です。
SSEP、MEP、サーモグラフィー、針筋電図検査の補助的診断で立証を行い、訴訟を検討します。


 
※アーチファクト、artifact
人工の産物、本来は存在しないものを意味しています。
頚椎などの固定術では、ドリルを使用して骨切りを行うのですが、微少なドリルの鉄粉が残り、この鉄粉がMRIの磁場に反応して画像がぼやけ、ハッキリと写りません。
肺のCT検査では、どんなに上手に息を 止めても心臓は動いています。
それにより、心臓周辺の組織はぶれて写り、気管支や血管がぶれて腫瘍のように見えることがあるのですが、そこに本当の腫瘍はありません。これを人工産物、アーチファクトと呼んでいます。



 
SSEP、MEPの検査所見ですが、現状で、調査事務所では有意な所見とは考えていません。
あくまでも、補助的な立証とされ、中心的にはMRI画像一辺倒の判断となっています。
 
前方固定術や脊柱管拡大形成術が実施されたものは、脊柱に奇形・変形の範疇で捉えて、11級7号が、軟部組織に器質的損傷が確認され、脊柱の可動域が2分の1以下に制限されたものは、8級2号が認定されています。
 
固定術ではなく、保存療法にとどまるものは、14級9号、12級13号、稀に9級10号が認定されるにとどまります。
 
脊髄損傷では、神経系統の機能の異常に該当し、後遺障害等級は、1、2、3、5、7、9、12、14級の8段階からの選択となります。
 
脊柱の奇形・変形では、日常生活で大きな支障が生じることは少なく、裁判では、逸失利益の積算で、喪失率の減額や喪失年数の短縮化が目立ちます。
これらの手術で、脊髄に対する圧迫が排除され、症状が一気に改善している被害者は、これでもやむを得ないと考えています。
 
圧迫を除去しても、脊髄に不可逆的な損傷を来している場合は、術後もスッキリとした改善が得られず、治療の方法もありません。
このケースでは、神経系統の機能の異常を立証して、8段階の選択を求めることになります。
 
自賠書式には、脊髄判定用の用紙が用意されており、後遺障害診断書と一緒に主治医に示して診断と作成をお願いしなければなりません。



 
脊髄不全損傷=非骨傷性頚髄損傷における後遺障害のポイント

MRI所見が得られているときは、立証にさほど苦労はありません。
しかし、受傷から2、3年が経過し、MRIで有意な所見が得られていないときは、大変に苦労します。
針筋電図検査で、神経原性麻痺が確認できれば、画像と同レベルの他覚的所見となります。


お問い合せ

ご相談お問い合せ