高齢化社会となり、材質の改良もあって、股関節などを人工関節に置換する人が増加しています。
それに伴い、人工関節周囲の骨折が増えているのです。
多くは、高齢者で、転倒を原因としたものですが、交通事故による骨折も、増加傾向です。
交差点で信号待ち停止中では、右足は軽くブレーキを踏んでいます。
この状態で、後方から追突を受けると、右股関節には大きな衝撃が加わります。
右股関節が人工関節では、衝撃でステムが下方に沈下し、ステム周囲が骨折することがあります。
歩行者、バイクや自転車VS自動車の出合い頭衝突では、直接的な打撃を原因として、ステム周囲の骨折を発症しています。
ステム周囲骨折は、大腿骨で発症することが圧倒的です。
症状は、局所の疼痛、腫れ、変形であり、歩けなくなります。
XPやCT検査で確定診断が行われています。
骨折に対しては、固定術の実施ですが、人工関節が緩んでいるときは、人工関節の再置換術などが検討されることになり、画像検査では、骨折による人工関節の緩みも評価しなければなりません。
治療は、ほとんどで、オペが選択されます。
骨折に対しては、プレートやワイヤーによる固定が行われ、人工関節に緩みが生じているときは、人工関節の再置換術が選択されます。
粉砕骨折や、人工関節の緩みで骨量が不足しているときは、腸骨からの骨移植も行われています。
ステム周囲骨折における後遺障害のポイント
1)事故前から股関節は人工関節であり、10級11号の加重障害となります。
つまり、10級11号以上の等級が認定されない限り、後遺障害としての評価はありません。
2)粉砕骨折で、腸骨からの骨移植と人工関節の再置換術が行われたときは、再置換術後の股関節の可動域に注目しなければなりません。
股関節の可動域が健側の2分の1以下に制限されているときは、股関節の用を廃したものとして8級7号、腸骨の変形で12級5号、併合7級となります。
ここから、加重の10級11号分を差し引くことになります。
3)股関節の可動域に制限が認められないときは、10級11号の既往歴に腸骨の変形12級5号を加えて、併合9級となり、ここから加重の10級11号を差し引くことになります。
4)人工関節に緩みが少なく、固定術のみが実施されたときは、ステムの沈下に伴う、下肢の短縮に衆目しなければなりません。
ステムが1cm以上沈下しているときは、短縮障害で13級8号が認定されます。
やはり、併合9級となり、ここから加重の10級11号を差し引くことになります。
5)被害者の多くが高齢者であり、糖尿病、腎疾患などで、再手術が困難も予想されます。
後遺障害の立証に困難が予想されます。