鼻骨は、メガネのブリッジが接する、鼻のつけ根部分で、眉間にある三角屋根の形をした薄い骨です。
交通事故では、ハンドルに鼻をぶつけて骨折することが多かったのですが、シートベルトが普及した今、これは激減し、現在は、もっぱら、バイク、自転車の衝突、転倒で発症しています。
外鼻の下部分の3分の2は軟骨でできており、骨折しにくいのですが、鼻骨は堅く折れやすいのです。
さらに、左右の鼻を分けている壁、鼻中隔の骨折を合併することが多いので要注意です。
鼻骨は薄く、肘が鼻に衝突したなど、比較的弱い力でも骨折しています。
鼻骨骨折では、
?鼻血、
?鼻筋が曲がる、斜鼻、
?鼻が低くなる鞍鼻、
?鼻が詰まる、鼻閉、
これらの症状が出現します。
骨折の診断はXPで可能ですが、折れ方の詳細は、CTで確認しなければなりません。
鼻血や鼻閉は腫れが引けば治まるので、オペをするかどうかは、鼻の変形の程度で決まります。
鼻骨は薄いものの、再癒合しやすいので、受傷後4〜10日でオペが実施されています。
オペでは、皮膚を切開することなく、鼻の穴に鉗子を入れてずれた骨を元に整復します。
鼻骨用スプリントによる外固定とガーゼによる内固定が行われています。
オペ後は数日間、ガーゼの鼻栓を入れ、2週間程度、専用のギプスを当てておきます。
※斜鼻 (しゃび)
鼻骨の側面を打撃したときは、鼻骨が横にずれた形となり、斜鼻と呼ばれています。
鼻中隔も骨折して横にずれることが多く、鼻は曲がり、ずれた方の鼻が詰まります。
※鞍鼻 (あんび)
打撃が鼻骨の上から働き、鼻骨が下に落ちる、脱臼と陥没を起こします。
鼻の付け根が陥没している形状を鞍鼻と呼んでいます。
鼻骨骨折における後遺障害のポイント
1)サッカー、ラグビーなどのコンタクトスポーツでも、鼻骨骨折は多発していますが、動体視力が良く、日頃から身体を鍛えていることもあって、大多数は軽傷で、後遺障害を残しません。
ところが、交通事故では、想定外の衝撃力もあって、重症例を多く経験しています。
鼻血、鼻筋が曲がる、斜鼻、鼻が低くなる鞍鼻、鼻が詰まる、鼻閉など、事故直後から多彩な症状が出現しますが、鼻血や鼻閉は、オペにより治癒しています。
しかし、斜鼻や鞍鼻となると、完治未満で、見た目の後遺障害を残すことが多いのです。
2)被害者がオペをためらう、耳鼻咽喉科の医師も積極的ではなく、形成外科への転院指示が遅れたときは、やや目立つ変形を残した状態で症状固定を迎えます。
受傷後1カ月以上を経過した骨折は、陳旧性と呼ばれるのですが、骨折は、ずれたまま癒合しており、形成外科で整復するには、骨切りをして移動させる必要が生じます。
受傷後4〜10日以内のオペに比較して治療が難しく、入院期間が長くなる傾向です。
こんなときは、斜鼻や鞍鼻変形を醜状痕と捉えて、後遺障害の申請に踏み切っています。
形成外科における整復は、本件事故を解決してから、健康保険で着手することになります。