耳には、外耳、中耳、内耳の3つの部屋があります。
外界の音は、外耳より侵入し、鼓膜を振動させます。
鼓膜の振動は、中耳を通り、内耳の蝸牛内部に満たされているリンパ液に伝わり、ここで液体振動に変換されます。液体振動は、蝸牛奥部のラセン器官を刺激します。
刺激が、内耳神経によって大脳の聴覚中枢に伝えられ、人は音を感じるのです。
内耳の後方にある三半規管と前庭は、身体の平衡機能を担当しています。
それぞれが回転運動・直線運動に反応し、反射的に全身の随意筋・不随意筋をコントロールして、視覚・深部感覚・小脳の助けにより、身体の運動や頭の位置を正常に保持しています。
※耳介
耳介は、軟骨の折れ曲がるヒダにより、集音と音の方向性の確認に有効な役割を果たしています。
耳たぶは、ヒダの凸凹で音の違いを拾い、共鳴させることにより、音を外耳道に送り込んでいます。
耳介の後に手をかざすと、音が大きく聞こえるのですが、耳介は、集音作用の働きをしています。
「 私の耳は貝のから、海の響きをなつかしむ 」
フランスの詩人、ジャン・コクトーの詩を、堀口大学さんが訳したもので、心に響くたった2行の詩です。
耳介は、貝殻に似ています。
※外耳道
成人で長さが3cm、くの字型に曲がり、奥に鼓膜が位置しています。
外耳道は、音を共鳴させ、鼓膜まで導く筒としての役目を果たしています。
入り口から1cmは、短毛により、虫などの異物が入らないようになっています。
そこには耳垢線が存在して、脂や耳垢を分泌しています。
※鼓膜
9×10mmの楕円形で、厚さ.1mm、外耳道の突き当たりに位置し、外耳道に対して、30°傾斜しており、空気の振動に敏感に反応して、振動しています。
※鼓室
鼓膜の内側から中耳となり、鼓膜の内側は、空気に満たされ、音を伝えるのに適した状態に保たれている鼓室です。
※耳小骨
鼓室の中は、左側から、つち骨(槌骨)、きぬた骨(砧骨骨)、あぶみ骨(鐙骨)の微少な3つの骨が関節で連結しており、3つの微少骨を耳小骨、連結を耳小骨連鎖と呼んでいます。
つち骨は一部が鼓膜に密着、あぶみ骨は、一部が、内耳の蝸牛の前庭窓にはまりこんでいて、耳小骨は、鼓膜の振動を内耳に伝える装置を形成しているのです。
外耳道からの音は、鼓膜と耳小骨の連鎖により、増強されて、内耳の液体に伝わっています。
耳小骨は、人体を構成している207個の骨の中では、最も小さい骨です。
※耳管
鼻の奥にある咽頭に連結しており、中耳内の気圧の変化を調整しています。
普段は閉じていますが、モノを飲み込む、欠伸をしたときに、耳管は開きます。
耳管の開閉により、中耳内の圧と大気圧を、一定に調節することができるのです。
高い山、飛行機で上昇すると、耳が詰まったような症状が出現します。
中耳と大気圧に差が生じ、鼓膜が引っ張られると、ツーンと詰まった感じになるのです。
唾を飲む、欠伸をすると、耳管が開き、圧力の調整が行われ、詰まった感じが無くなります。
唾を飲み込むと、両耳にゴックンという音を感じるのですが、これが耳管の開く音です。
※内耳
内耳は、音の感覚器である蝸牛と、身体の平衡感覚器である半規管と前庭で構成されています。
半規管は、からだのバランスを保持する役割を果たしています。
半規管は、3つ存在しているところから、三半規管と呼ばれています。
身体の平衡を維持し、運動の加速度を感じ、回転加速度を感じ取っています。
身体をグルグル回転させると、めまいがしてふらつきますが、これは、三半規管が刺激されたことによるものです。
※前庭
耳石器といわれる器官があり、重力・遠心力・直線加速度・頭の位置などの外部からの刺激を感じとっています。エレベーターで、上がり下がりの感覚を感じ取るのは耳石器です。
※蝸牛
音を感じ取る蝸牛の中は、リンパ液で満たされています。
中耳から伝えられた振動はここで液体の波に変化します。
液体の波は、有毛細胞によって電気信号に変換され、聴神経から大脳へ伝えられています。
外耳の外傷 耳介血腫 (じかいけっしゅ)
上記の写真は、北京オリンピック、柔道の金メダリスト、石井慧さんですが、両耳とも、かなりひどい耳介血腫となっています。
耳介は、軟骨の上に、軟骨膜と皮膚を貼り付けたような形であり、耳介が強く擦られると、皮膚と軟骨の間が剥がれて隙間ができ、そこに血液が溜まって、紫色に腫れ上がります。
溜まった血液=血腫が、軟骨への血液供給を遮り、軟骨は壊死して耳が変形するのです。
この変形は、力士耳、カリフラワー耳と呼ばれ、相撲、柔道、レスリング、ボクシング、ラグビーの選手によく見られるのですが、交通事故でも、歩行者、自転車やバイクの運転者に多発しています。
隙間に溜まった血液は、注射針で吸い取っても、直ぐに、血液が溜まってくるのです。
完璧に治癒させるには、隙間をなくすオペを受けなければなりません。
耳介血腫を繰り返すと、その隙間を埋めるように、軟骨が盛り上がり、耳介が変形します。
こうなると、オペで新しくできた軟骨を切除する治療が選択されています。
放置すると、元に戻ることはありません。
耳介は硬くなり、付け根が切れやすくなります。