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〇胸腹部臓器〇
女性の生殖器について







女性の内性器は、膣、子宮、卵管、卵巣で構成されています。
腟は、性交時では、精子が放出される部位ですが、出産時には胎児が出ていく経路、産道の一部となります。子宮は、受精卵が胚から胎児へと成長していく部位であり、卵管は、精子が卵子と出合い、ここで受精が起こります。卵巣は、卵子が作られ、放出される臓器です。









女性の外性器は、恥丘、大陰唇、小陰唇、バルトリン腺、クリトリス=陰核などで構成されています。
外性器は、精子が体内に入るのを可能にし、感染性の微生物から内性器を保護し、性的な快感を与えるなど3つの機能を担っています。
 
交通事故で想定される女性生殖器の外傷としては、
男性に比較すれば、圧倒的に少数例ですが、自転車、バイクの転倒事故による外陰部の打撲、骨盤の多発外傷による卵巣の破裂、卵管に閉塞や癒着を残すもの、子宮頚管に閉塞を残すもの、子宮を失ったものが発生しています。
 




女性、生殖器外傷による後遺障害のポイント
 
男性と女性の生殖器には、性差が大きいものの、発生的には同じ原基から作られており、男女生殖器の各部の間には相同関係が認められています。
 
※相同
生物の器官で、相異なる形態と働きを示していますが、発生起源が同一であるときの相互の関係を相同と呼んでいます。例えば、卵巣と精巣は、相同関係にあります。

 
そこで、男性と同じく、生殖器外傷に伴う後遺障害については、以下の3つに分類されています。
1)生殖機能を完全に喪失したもの、
2)生殖機能に著しい障害を残すもの、
3)生殖機能に障害を残すもの、
4)生殖機能に軽微な障害を残すもの、
 
1)生殖機能を完全に喪失したものは、準用7級相当が認定されています。
?両側の卵巣を失ったものは7級相当、
 
?常態として卵子が形成されないものは7級相当
これは、女性で2.5グレイ以上の大量の放射線被爆を前提としたもので、交通事故では、全く、想定されていません。
 
2)生殖機能に著しい障害を残すものは9級17号が認定されています。
?瘢痕による膣口狭窄で男性器の挿入が困難であると医師が認めるものは9級17号、
 
?両側の卵管の閉塞、頚管の閉塞、または子宮の亡失を画像所見で立証すれば、9級17号、
 
ここに大きな疑問が生じます。
交通事故で子宮の全摘術となると、その女性は、将来、妊娠・出産することはできなくなります。
事実上、生殖機能を完全に喪失したものに該当するのです。
もっとも、卵巣が残っていれば、そこから卵子を拾い上げ、夫の精子と顕微鏡下に受精させ、他の健康な女性の子宮に移せば、夫婦間の子どもを手にすることはできます。
では、その高額な費用は、加害者側に請求できるのでしょうか?
完全な弁護士マターですが、この損害賠償請求は、あり得ることなのです。
 
9級17号の認定で済ますことのできることではありません。
もちろん、7級相当が認定されたとしても、納得できるものではありません。

 
3)生殖機能に障害を残すものは、11級10号が認定されます。
 

比較的狭骨盤、または狭骨盤であると医師により認められるものは、11級10号、
 
交通事故外傷により骨盤骨折となると、骨盤の変形により産道が狭窄することが予想されます。
妊娠の機能には問題がないものの、産道が一定程度以下に狭窄すると、経膣分娩=正常分娩が困難となり、帝王切開の対応が必要になります。
 
交通事故外傷により、骨盤骨が変形を来しとときは、その他の体幹骨の著しい変形障害で12級5号が認定されることがあります。生殖器の障害とその他の体幹骨の障害は、同一の原因によるものであり、いずれか上位の等級、本件では11級10号で認定されることになります。
 
比較的狭骨盤とは、産科的真結合線 10.5?未満9.5?以上、入口部横径 11.5?未満10.5?以上、
狭骨盤とは、産科的真結合線 9.5?未満、入口部横径 10.5?未満のいずれかの要件を満たすものを言います。
 
4)生殖機能に軽微な障害を残すもの
通常の性交を行えるが、生殖機能に僅かな障害を残すもので13級相当が認定されます。
 
?一側の卵巣を失ったもの
 
?外性器の外傷後の瘢痕による膣口狭窄により、男性器の挿入が困難ではないものの、膣口に残る瘢痕により性交時に疼痛が生じるときは、受傷部位の疼痛として、14級9号、12級13号が認定されています。
 
上記をまとめます。
 
女性の生殖器障害
7級5号 両側の卵巣を失ったもの
常態として卵子が形成されないもの
9級11号 膣口狭窄を残すもの
(陰茎を膣に挿入することができないと認められるものに限る、)
両側の卵管の閉鎖または癒着を残すもの、頚管に閉鎖を残すものまたは子宮を失ったもの
(画像所見により、認められるものに限られる、)
11級10号 比較的狭骨盤または狭骨盤が認められるもの
13級11号 1側の卵巣を失ったもの
14級9号
or
12級13号
膣口狭窄により、男性器の挿入が困難ではないものの、膣口に残る瘢痕により性交時に疼痛が生じるもの、
 
婦人科学会では、女性の性機能障害を、以下の4つに分類しています。
?性欲減退、
?性興奮障害、
?女性極致感障害、
?性交痛、
?膣痙攣、
 
ところが、自賠責や労災保険では、生殖機能の障害に限定して等級の認定が行われています。
例えば、40代後半ともなれば、平均的には、男女とも生殖活動を終えています。
実際の夫婦生活では、性欲、性的興奮や極致感の障害が深刻なものとなっているのです。
これらの障害は、自覚症状が中心であり、立証の難しさはありますが、「幾つになっても、生殖能力?」では、損害の実態に迫れません。
これらは、弁護士マターですが、弁護士の奮闘を願うものです。
 
※極致感
日本では、イクー、アメリカでは、カムと表現されています。

 
 
 
男女をまとめます。
 
男女の生殖器障害
7級5号 両側の睾丸を失ったもの
両側の卵巣を失ったもの
常態として精液中に精子が存在しないもの
常態として卵子が形成されないもの
9級11号 陰茎の大部分を欠損したもの=陰茎を膣に挿入できないと認められるもの
勃起障害を残すもの
射精障害を残すもの
膣口狭窄を残すもの=陰茎を膣に挿入することができないと認められるもの
両側の卵管の閉鎖または癒着を残すもの、頚管に閉鎖を残すものまたは子宮を失ったもの=画像所見により、認められるものに限る、
11級10号 比較的狭骨盤または狭骨盤が認められるもの
13級11号 1側の睾丸を失ったもの
1側の卵巣を失ったもの
14級9号
or
12級13号
膣口狭窄により、男性器の挿入が困難ではないものの、膣口に残る瘢痕により性交時に疼痛が生じるもの、
 


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