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管腔臓器 肝外胆管損傷 (かんがいたんかんそんしょう)
交通事故で胆嚢が破裂、摘出術を受けた場合、胆嚢の摘出では、13級11号の後遺障害等級が認定される可能性があります。
胆嚢は、肝臓で作られた胆汁を12分の1に濃縮して貯蔵しているのですが、胆嚢が摘出されても、胆汁は肝臓で生産されており、胆管を通じて十二指腸に供給されます。
胆嚢が摘出されれば、胆汁を濃縮する機能は失われます。
しかし、身体が慣れてくれば、若干の支障があっても、ヒトの生存には問題がありません。
では、胆嚢ではなく、胆汁を通過させている肝外胆管が損傷されるとどうなるのでしょうか?
交通事故では、肝外胆管が離断、断裂することがあります。
これを放置すると、腹膜炎となり、やがては敗血症で死に至ります。
離断、破裂となると、Tチューブなどで胆管を吻合するオペが実施されていますが、それでも修復できないときは、空腸を用いた胆管空腸吻合などによる再建術が行われています。
しかし、胆道再建術を行うも、胆管狭窄を生じることがあります。
胆管狭窄では、胆汁の通過障害によって、胆汁のうっ滞を生じ、肝障害や黄疸、腹痛、発熱の症状が出現し、狭窄が長期化すると、胆汁うっ滞性の肝硬変に進行、死に至ります。
ヒトが生きるためには、なんとしてでも、肝外胆管を修復しなければならないのです。
肝外胆管損傷における後遺障害のポイント
肝外胆管が修復されれば、後遺障害を残すことはありませんが、通常、胆道再建術を行ったときには、胆嚢は摘出されることが多数例で、そうなると、胆嚢摘出により、13級11号が認定されています。
※胆嚢摘出後症候群
胆嚢の摘出術を受けたあとに、上腹部の痛みや不快感、発熱、黄疸、吐き気などを発症し、胆道の運動異常に原因があると考えられるものを胆嚢摘出後症候群と呼んでいます。
胆嚢摘出後に症状がみられたとき、詳細な検査を行うと、胆道に空気が入り込む胆道気腫症や十二指腸乳頭部、総胆管の十二指腸への出口が狭くなっていたりすることがありますが、中には、症状は続いているが、どんなに検査を行っても、胆道や周囲の内臓に原因となる病気が見つからないことがあり、このような例を胆嚢摘出後症候群と呼んでいます。
胆道の運動異常の一種と考えられており、胆道ジスキネジーと診断されることもあります。
血液検査やX線検査、超音波検査で胆道の病気であることが疑われれば、CTやMRI検査、胆道造影検査などで診断を確定していきます。
胆道にも周囲の臓器にも異常がみられず、胆嚢摘出後症候群が疑われるときは、放射性同位元素を用いたシンチグラフィーによる胆道の機能検査が行われることもあります。
治療は、胆汁の流れをよくする薬や、胆管の機能を改善するような薬などを内服することにより治療を行っていきます。
程なく、症状は改善しますので、胆嚢摘出後症候群で後遺障害が認定されることはありません。
※胆汁の成分
水分 約97%
胆汁酸 約0.7%
ビリルビン(胆汁色素) 約0.2%
コレステロ−ル 約0.06%
※総胆管の長さは、10〜15cmで、太さは6?です。