脊柱に著しい変形を残すもの
脊柱に著しい変形を残すものとは、XP、CT、MRI画像により、脊椎圧迫骨折等を確認することができるときであって、次のいずれかに該当するものです。
脊柱圧迫骨折等により2つ以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後弯が生じているもの、
前方椎体高が著しく減少したとは、減少した全ての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さ以上のものです。
☆3つの椎体の圧迫骨折で、前方椎体高が減少した?
3つの椎体の後方椎体高が120mm、前方椎体高が70mmのとき、その差は50mmとなります。
1つの椎体の後方椎体高は、120mm÷3=40mmですから、6級5号が認定されます。
☆脊柱圧迫骨折等により1つ以上の椎体の前方椎体高が減少し、後弯が生ずるとともに、コブ法による側弯度が50°以上となっているもの?
前方椎体高が減少したとは、減少した全ての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%以上であるものを言います。
☆2つの椎体の圧迫骨折等で前方椎体高が減少した?
2つの椎体の後方椎体高の合計が80mm、前方椎体高が55mmのとき、その差は25mmとなります。
1つの椎体の後方椎体高は、80mm÷2=40mmの50%は、20mmとなります。
こんなときは、コブ法による側弯度が50°以上であれば、6級5号が認定されます。
※コブ法とは、XPにより、脊柱のカーブの頭側および尾側においてそれぞれ水平面からもっとも傾いている脊椎を求め、頭側でもっとも傾いている脊椎の椎体上縁の延長線と尾側でもっとも傾いている脊椎の椎体の下縁の延長線が交わる角度、側弯度を測定する方法のことです。
脊柱の後弯の程度は、脊椎圧迫骨折や脱臼により前方椎体高が減少したときに減少した前方椎体高と当該椎体の後方椎体高の高さを比較することにより判定されています。
また、脊柱の側弯は、コブ法による側弯度で判定されます。
なお、後弯または側弯が頚椎から胸腰部にまたがって生じているときには、上記?にかかわらず、後弯については、前方の椎体高が減少した全ての脊椎の前方椎体高の現象の程度により、また、側弯については、その全体の角度により判定されています。
脊柱に中程度の変形を残すもの
脊柱に中程度の変形を残すものとは、XP等により脊椎圧迫骨折等を確認することができるときであって、次のいずれかに該当するものです。
☆脊柱圧迫骨折等により1つ以上の椎体の前方椎体高が減少し、後弯が生じているもの、
☆コブ法による側弯度が50°以上であるもの、
☆環椎または軸椎の変形・固定により、次のいずれかに該当するもの、
A 60°以上の回旋位となっているもの
B 50°以上の屈曲位または60°以上の伸展位となっているもの
C 側屈位となっており、XP等により、矯正位の頭蓋底部両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30°以上の斜位となっていることが確認できるもの
この内、AおよびBについては、軸椎以下の脊柱を可動させず、当該被害者にとっての自然な肢位で、回旋位または屈曲・伸展位の角度を測定します。
第1頚椎、C1は環椎、Atlas、C2は軸椎、Axisと呼ばれています。
環椎と軸椎は脊柱の中、先頭を切る位置を占めています。
後頭骨/環椎、環椎/軸椎の2カ所の骨間だけは椎間板が存在しません。
椎体と椎体をつなぐ繊維輪による連結と運動の制約がないので、自由で大きな関節運動ができます。
頚椎の回旋運動可動域の2分の1を後頭/環椎、環椎/軸椎の上位頸椎が演じています。
可動域が大きいということは、逆に障害を受けやすい不安定な部位とも言えるのです。
※環椎または軸椎は、頚椎全体による可動範囲の相当の割合を担っています。
そのため、環椎または軸椎が脊椎圧迫骨折等により変形して固定となり、または環椎と軸椎の固定術が行われたために、環椎または軸椎の可動性がほとんど失われると、頚椎全体の可動範囲も大きく制限され、上記に該当する変形・固定となると、脊柱の運動障害8級2号にも該当するケースがほとんどとなります。なお、環椎または軸椎が変形・固定していることについては、最大矯正位のXPでもっともよく確認することができます。
脊柱に著しい変形を残すもの、および、脊柱に中程度の変形を残すものは、脊柱の後弯または側弯の程度により等級が認定されており、変形だけが注目されているのではありません。