〇上肢・手指〇
<手指の靭帯・腱損傷および骨折における後遺障害のポイント>
2)治療の現場では?
手指の専門外の開業医では、靱帯や腱損傷の知識に乏しく、元から関心を示しません。
骨折の発見では真剣さがありますが、XPによる画像診断では見落とすことが多いのです。
CT、MRIと積極的に撮影すればいいのですが、専門外では、そこまでの熱意がありません。
結果、「突き指なら、しばらく、様子を見ましょう?」で、スルーされることが大半、カルテに自覚症状の記載を残すことも稀な状況となっているのです。
幸い、骨折が発見されたときでも、ギプス固定がやっとで、後療法のリハビリには無関心です。
なお、被害者にとって、たちが悪いのは、受傷直後では、それほどの訴えでもないのに、時間の経過とともに、ズレや不安定性が増強し、痛みや運動制限の訴えが強くなってくることです。
損保料率機構調査事務所は、等級の審査では、受傷直後からの症状の一貫性を重視しています。
ときをおいて、だんだん重症化するものは、疑いの目で見られるのです。
3)合理的な解決方法は?
受傷2カ月以内に専門医を探し出して受診することです。
専門医の優れたオペと後療法がなされれば、多くは後遺障害を残すこともなく治療が完了します。
もっとも、交通事故ですから、不可逆的な損傷で後遺障害を残すこともあります。
であっても、ダラダラ治療を続けることなく、早期社会復帰が実現できたことは事実です。
これは大いに評価できることなのです。
現実は、こんなにスムーズには進んでいません。
漫然治療を続け、保険会社から治療打ち切りの催促を受けるにおよんで、やっと重い腰を上げる被害者が圧倒的なのです。
受傷から4、6カ月を経過していれば、専門医を受診、オペを受けても外傷は陳旧化しており、劇的な改善は得られず、当然のことながら、後遺障害も本件事故との因果関係を立証することができないで、大多数は全滅、轟沈することになります。
これは悔しいことですが、生々しい現実です。
4)後遺障害について
まず、手指の機能障害では、認定基準が相当に厳しいという事実があります。
もう1つ、手指の可動域の計測は煩わしい作業で、いつでも正確ではない現実もあります。
多くの被害者から、「何級が認定されるのでしょうか?」こんな質問がなされていますが、等級に踏み込むには、被害者の年齢、事故発生状況と画像、治療を行った治療先と医師、受傷からオペまでの期間、オペの技術、オペ後の後療法の情報が必要となります。
やはり、受傷2カ月の段階で、専門医を受診する、後遺障害は弁護士に相談して見通しをつけることが重要です。
鉄は、熱いうちに叩かなければなりません。