〇上肢・手指〇
<手根骨の骨折>舟状骨々折(しゅうじょうこつこっせつ)のポイント
舟状骨(しゅうじょうこつ)は親指のつけ根に存在しています。
専門医は、親指のつけ根が痛んだら舟状骨骨折、小指のつけ根が痛んだらTFCC損傷を疑います。
転んで手のひらを強く突くと、手関節を構成する手根骨の一つ、舟状骨が骨折することがあります。
交通事故では、自転車とバイクの運転者で、数多くを経験しています。
舟状骨は手関節にある8つの手根骨の1つで親指側にあり、手根骨の中でも重要なものの1つです。
船底のような彎曲をしているので船のような形の骨ということで舟状骨と呼びます。
舟状骨は、親指の列にあり、他の指の列とは45°傾斜して存在しています。
そのため舟状骨の骨折は、通常のXPでは骨折は見えにくく、見逃されることが多いのです。
XPよりも、CTが診断には有用です。
舟状骨は血液の流れが悪いため、骨が付きにくい、偽関節になりやすい特徴があります。
骨折と骨の血行状態を知るには、MRIが役立ちます。
舟状骨骨折における後遺障害のポイント
1)放置しておくと、因果関係ではねられる可能性大
症状は、手関節を動かすと痛みが強く、手のひらの親指側を押すと痛みが出現、握力は低下します。
ところが、耐えられない激痛ではなく、医師に与えるインパクトは弱いのです。
「しばらく様子を見ましょう?」と言われ、専門医でなければスルーされるのが一般的です。
4、5カ月を経過し、手の専門外来を受診、舟状骨骨折と診断されても、損保料率機構調査事務所は、本件事故との因果関係を疑うのです。
初診時のカルテに、右手打撲などの傷病名がなく、自覚症状の記載もなければ、お手上げです。
骨折が発見されているのに、因果関係が否定され、非該当とされるのです。
受傷後、手首の痛みが、なかなかとれないときには、急いで専門医を受診しなければなりません。
2)さて、症状固定、手術、どっちを選ぶか
受傷直後に手術を受けたものは、6カ月後の残存症状で後遺障害を申請することになります。
骨折部に痛みを残しており、変形骨癒合が確認できれば、14級9号の認定となります。
さて、一般的には、ギプス固定で保存的に治療が行われます。
この骨折の固定期間は、6〜10週間と長期間となるため、手関節の装具をつけることもあります。
ところが、保存的に治療しても、XPで骨の吸収が強く、骨片がずれているものは、「偽関節となるので、手術で固定しましょうか?」こんな議論が湧き上がってくるのです。
6カ月の時点で、12級6号に該当する機能障害を残していれば、後遺障害の申請を優先しています。
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( )は、保険会社の基準額です。
保険会社からの提示なら、105万円、12級6号でも618万円がやっとです。
弁護士が交渉することにより、14級9号でも295万円、12級6号であれば1237万円となります。
12級6号が予想されるときは、症状固定として、後遺障害を優先しなければなりません。