手の掌側にある屈筋腱(指を曲げるための腱)が断裂すると、筋が収縮しても、その力が骨に伝達されないので、手指を曲げることができなくなります。
切創や挫創による開放性損傷、創のない閉鎖性損傷、皮下断裂がありますが、圧倒的に前者です。
屈筋腱の損傷では、同時に神経の断裂を伴うことが高頻度で、そんなときは、屈筋腱と神経の修復を同時に行うことになり、専門医が登場する領域です。
手指の屈筋腱は、親指は1つですが、親指以外の指では、深指屈筋腱と浅指屈筋腱の2つです。
親指以外で、両方が断裂すると、手指が伸びた状態となり、まったく曲げることができなくなります。
深指屈筋腱のみが断裂したときは、DIP関節(第一関節)だけが伸びた状態となり、曲げることができなくなりますが、PIP関節(第二関節)は曲げることができます。
屈筋腱損傷の治療は、手の外傷の治療のなかで最も難しいものの1つで、腱縫合術が必要です。
治療が難しい理由には、再断裂と癒着の2つの問題があります。